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京都地方裁判所 平成5年(ワ)1967号 判決

京都市〈以下省略〉

原告

右訴訟代理人弁護士

長谷川彰

木内哲郎

右訴訟復代理人弁護士

井上博隆

長野浩三

東京都千代田区〈以下省略〉

被告

新日本証券株式会社

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

宮﨑乾朗

大石和夫

玉井健一郎

板東秀明

京兼幸子

辰田昌弘

関聖

森分実

田中英行

塩田慶

主文

一  被告は原告に対し、五八万七四八六円及びこれに対する平成五年八月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを五分し、その一を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。ただし、被告が五〇万円の担保を提供するときは、右仮執行を免れることができる。

事実及び理由

第一原告の請求

被告は原告に対し、二九三万七四三四円及びこれに対する平成五年八月五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(なお、訴状記載の請求の趣旨に「二九三万七四三円」とあるは、訴状記載の請求原因等に照らし、「二九三万七四三四円」の誤記と認められる。)。

第二事案の概要

本件は、原告が被告会社の従業員の違法な勧誘行為等によりワラントを購入させられ、その結果、ワラント購入代金と売却代金との差額相当額(二六三万七四三四円)及び弁護士費用相当額(三〇万円)の損害を被ったとして、債務不履行、不法行為等(民法四一五条、同法七〇九条、七一五条、証券取引法一六条)に基づく損害の賠償として、右損害の合計額二九三万七四三四円及びこれに対する訴状送達の日の翌日(不法行為後の日)である平成五年八月五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

一  争いのない事実

1  当事者

(一) 原告は総合建築業を営む会社の代表取締役である。

(二) 被告会社は、肩書地に本社を置き、証券取引法に基づく大蔵大臣の免許を受けて証券業を営む証券会社(同法二条)であり、京都市下京区四条通柳馬場西入に京都支店を有していた。

2  新株引受権証券(ワラント)の意義等

(一) 新株引受権付社債(ワラント債)は、社債権者に社債発行会社の新株の引受権が付与された社債であり、社債権者が所定の期間(新株引受権行使期間内)に所定の条件で、すなわち、その新株引受権に基づき所定の価格で所定の数又は価額の新株の発行を社債発行会社に請求することができるものである。

商法は、新株引受権を社債と一体化して債券に表示し、新株引受権のみの譲渡を認めない、いわゆる非分離型の新株引受権付社債と、新株引受権証券を債券とは別に発行し、新株引受権証券の交付により新株引受権のみの譲渡を認める、いわゆる分離型の新株引受権付社債を認めている(商法三四一条の八第二項五号、四項、三四一条の一三、一四)。

そして、分離型の新株引受権付社債における新株引受権証券(ワラント)の譲受人は、非分離型の新株引受権付社債の社債権者と同様に所定の期間内に所定の価額で、所定の数又は額の新株の発行を発行会社に請求することができる。

(二) 新株引受権証券(以下「ワラント」という。)とは、右のように、一定期間内に一定の価格で一定数量の新株を買い取ることができる権利が付与された証券のことをいい、具体的には新株引受権付社債(ワラント債)の発行後にワラントと社債券(エクスワラントともいう。)に分離された場合のワラント部分を指す。

3  原告と被告会社との取引経過等

(一) 原告は、昭和六三年ころ、被告会社京都支店の外務員であったB(以下「B」という。)の訪問を受け、被告会社京都支店との間で株式取引を行うよう勧誘され、その後、同支店の間で株式の現物取引を行うようになった。

(二) 原告は、平成元年四月一〇日、Bから電話で若築建設のワラント(新株引受権証券)を購入するよう勧誘を受け、被告会社から「ワカチクケンセツWR93」という銘柄の外貨建てワラント(以下「若築建設ワラント」という。)一〇ワラントを購入し、代金として一五五万八〇五〇円を支払った。

(三) ワラントの価格は、当時新聞紙上に発表されていなかったことから、価格については、Bが原告に逐次連絡を入れることとなっていた。

そして、原告は、平成元年四月二六日、Bから若築建設ワラントが値上がりし儲かっていますとの連絡を受けるとともに売却を勧められたことから、同人の勧めに従って被告会社で同ワラントを売り、売却代金として一八五万三〇三一円を得た(したがって、原告が若築建設ワラントの取引によって得た利益は差引二九万四九八一円である。)。

(四) 原告は、平成元年五月二九日、Bからトヨタ自動車のワラントの購入を勧められ、被告会社から「トヨタジドウシャWR93」という銘柄の外貨建てワラント(以下「トヨタ自動車ワラント」という。)二〇ワラントを購入し、代金として二九三万二五二五円を支払った。

その後、原告は、平成五年五月一七日、被告会社で同ワラントを売り、売却代金として一一〇円を得た。

二  主たる争点等

1  本件における主たる争点は、次のとおりである。

(一) Bの勧誘行為の内容等(取引経過等)

(二) Bら被告会社従業員の違法行為(義務違反)の有無

(1) 説明義務違反の有無

(2) 誠実・公正業務遂行義務違反の有無

(3) 適合性の原則遵守義務違反の有無

(4) 利益相反回避義務違反の有無

(5) 有価証券目論見書交付義務違反の有無

(三) 被告会社の責任の有無

(四) 原告の損害の有無と損害額

(五) 過失相殺の可否

2  これらの各争点について、当事者の主張の要旨は次のとおりである。

【原告の主張】

(一) Bの勧誘行為の内容等(取引経過等)について

(1) Bは、平成元年四月一〇日、それまでワラント取引の経験がなかった原告に若築建設ワラントを購入するよう勧誘し、その際、原告に対し「絶対に儲かります。」「これは取れます。」「ちょっと持ってみてください。」などと言い、原告が「ワラントはわからないからかなん。」などと購入意思のないことを明示しているのに、執拗に勧誘を続けたため、原告もBのいうように確実に儲かるものならと購入に応じた。また、Bは、ワラントの仕組みや権利行使期間の存在、同期間経過後は購入したワラントが紙屑同然の無価値なものとなること等の説明を行わなかった。

(2) また、Bは、平成元年五月二九日、原告にトヨタ自動車ワラントの購入を勧誘した際にも、原告に対しワラントの仕組みや権利行使期間の存在、同期間経過後は購入したワラントが紙屑同然の無価値なものとなること等の説明を行わず、若築建設ワラントの売買で現に短期で利益を得られたことを強調し、今度も「必ず儲かる」と言って、原告にトヨタ自動車ワラントの購入を迫った。

原告としても、これまでにBの推奨した銘柄の株式の取引で利益を出したこともあり、若築建設ワラントで利益を出した直後でもあったことから、Bを信用し、トヨタ自動車ワラントを購入することとした。

(3) 原告がトヨタ自動車ワラントを購入した後は、同ワラントが値上がりしているとの連絡もないまま約一年六か月が経過した平成二年一二月ころ原告がBに問い合わせたところ、同ワラントは値下がりを続け損失が出ているとのことであったが、この際にも、Bからワラントに権利行使期間が存在すること等について全く説明はなかった。

そこで、原告は、値下がりしたこと自体は株式取引においても生ずることであり、その値下がり幅が異常に大きいとは思ったものの、トヨタ自動車は優良企業であり、いずれ値上がりするであろうと考えて、それまでいわゆる長期塩漬け投資とするつもりで保有することとした。

(4) ところが、その後、ワラントには権利行使期間が存在すること、同期間を経過すると購入したワラントが無価値となってしまうことを知るに至ったが、そのときには、投資額からみて零に近い値下がりをしており、やむなく権利行使期間満了前に売却したものの、売却代金として一一〇円を手にしたのみであった。

(二) Bら被告会社従業員の違法行為(義務違反)について

(1) 説明義務違反について

① ワラントの特徴等

ワラントは、権利行使期間内に一定の価格(権利行使価格)で一定の数量の当該ワラント発行会社の新株を引き受けることのできる権利(ないしそれを表象した証券)であり、同期間を過ぎれば経済的価値を失い無価値となってしまうものである。ワラントを購入した場合の投下資本の回収方法としては同期間内にワラントを転売することと右権利を自ら行使して代価を払い込み新株を引き受けることとがある。当該ワラント発行会社の株価が権利行使価格を上回っていれば権利を行使することにより有利な条件で株式を取得することができるから、ワラントは株価と権利行使価格との差額分(具体的には、これに権利行使できる株式数を乗じた総額)の経済的価値を有することになり、これがワラントの理論価格(パリティ)となり、株価が権利行使価格を下回っているときには権利行使する意味がなくなり、ワラントの理論価格は零となる。

しかし、権利行使期間が残存していれば、将来株価が上昇に転じて有利な条件で権利行使ができる可能性もあるため(その残存期間が長いほど、その期待も大きい。)、こうした思惑に基づいてワラントは理論価格に将来の値上がり期待値(プレミアム)を付加した価格で取り引きされるのが通例であり、理論価格が零となったときでも、実際の価格は零とはならず、取引が続けられる。また、株価と権利行使価格との差額(理論価格)が一つの基準となって取引価格が形成されていくものであるから、その値動きは必然的に株価の何倍もの大きさとなる。したがって、投資対象として端的に株式と比較すると、よりハイリスク・ハイリターンの商品ということができる。

② 被告会社(従業員)が尽くすべき説明義務の内容

ワラントは、右のとおり、株式や転換社債その他の有価証券と比較するとその性質に顕著な差異があり、価格変動の大きさや権利行使期間の経過による投資額全額の損失を被る危険性、権利行使できる残存期間の長さ、権利行使価格、株式の時価等が要因となる独特の価格形成のメカニズムを有するなど、内容的に複雑であり、取引に伴う危険性もより大きなものがある。また、分離型新株引受権付社債が国内で発行されるようになったのは昭和六〇年一一月のことであり、国外で発行された外貨建てワラントが国内に持ち込まれて取り引きされるようになったのは昭和六一年一月のことであるから、被告会社(従業員)が原告に若築建設ワラントやトヨタ自動車ワラント(以下、これらを併せて「本件ワラント」という。)の購入を勧誘した当時、一般の投資家にとってワラントは投資対象としてまだまだ目新しいものであり、その特徴等が周知されているとは到底いえない状況にあったといえる。

そして、実際に、原告自身もワラントについての知識を欠いていたところであるから、被告会社あるいはその従業員であるBは、原告にワラントの購入を勧めるに当たっては、右のとおり、ワラントの価格変動の大きさ、権利行使期間の経過により投資額全額の損失を被る危険性、独特の価格形成のメカニズムなど当該取引の概要及び取引に伴う危険性について説明を尽くすべき義務を負っていたものである。

③ Bの説明義務違反

ところが、Bは、原告に本件ワラントの購入を勧誘するに当たり、右のようなワラントの価格変動の大きさ、権利行使期間の経過により投資額全額の損失を被る危険性、独特の価格形成のメカニズムなど当該取引の概要及び取引に伴う危険性について説明することなく、原告に本件ワラントの購入を勧誘し、原告に同ワラントを購入させたのであり、Bの原告に対する右勧誘は被告会社(及びその従業員)が負っている説明義務に違反するものである。

(2) 誠実・公正業務遂行義務違反について

証券会社並びにその役員及び使用人は、顧客に対して誠実かつ公正にその業務を遂行する義務を負い(証券取引法四九条の二)、この義務に基づき証券会社は有価証券の売買に関し、虚偽の表示をし、もしくは誤解を生ぜしめるべき表示をする行為が禁止されている(同法五〇条一項六号、証券会社の健全性の準則に関する省令二条一号)。また、証券会社が顧客に株価変動等に関する断定的判断を提供して勧誘する行為も禁止されている(証券取引法五〇条一項一号二号)。

しかるに、被告会社(従業員)は、原告との本件ワラントの取引に当たり、ワラントの商品内容や特性・危険性について説明を行わなかったばかりか、原告に対し、「償還年月五年六月」と表示し、権利行使期間の表示のない「外国証券取引報告書・計算書」(以下「取引報告書」という。)を送付し、有価証券の売買に関し虚偽の表示もしくは誤解を生ぜしめるべき表示をした。

さらに、Bは、原告に対する勧誘に当たり、「絶対儲かります。」「これは取れます。」などと説明して勧誘しているが、これは株価変動等に関する断定的判断を提供して勧誘する行為に該当する違法な勧誘行為である。

(3) 適合性の原則遵守義務違反について

証券会社は、投資家に対する投資勧誘に際しては、投資者の意向、投資経験及び資力等に最も適合した投資が行われるよう十分に配慮すべき義務を負う(証券取引法五四条一項一号、大蔵省証券局長から日本証券業協会会長宛て昭和四九年一二月二日付の二二一一号通達)。これはいわゆる適合性の原則と呼ばれ、証券会社の従業員が顧客を勧誘する際の大原則であり、証券会社は右適合性の原則に従って投資勧誘を行う法的義務がある。

そして、原告においては、ワラントのようにハイリスク商品を購入する意向はなく、かつワラント投資に関する知識も経験もなかったのであるから、被告会社(従業員)は原告にワラント取引を勧誘すべきでないのに、Bは原告にワラント取引を勧誘し、右義務に違反した。

(4) 利益相反回避義務違反について

被告会社は、取次業務と売買業務を併せ営むことが認められている総合証券会社である。取次(委任)と売買とでは法形式が異なり利益相反を起こす可能性があることから、証券会社は常に利益相反を回避すべき義務を負う。具体的には、証券会社は、投資者から有価証券の取引に関する注文を受けたときには、その注文を受諾する前に自己が投資者の相手方となって売買を成立させるか、それとも媒介、取次又は代理によってその売買を成立させるかを投資者に明らかにしなければならない(取引態様明示義務、証券取引法四六条)。証券会社がいかなる立場で投資者に取引対象となっている有価証券を推奨しているかを明らかにしなければ投資者が合理的な判断を下すことはできないからである。被告会社(その従業員であるB)は、かねてより原告の株式売買の取次業務を行っていたところ、何らの説明をすることもなく、本件ワラントのような外貨建てワラントの売買業務に切り換え、原告にワラントを購入せしめて右義務に違反した。

(5) 有価証券目論見書交付義務違反について

本件ワラントのような外貨建てワラントは、国外で発行・引受されるものであるから、発行時において種々の規制を定める日本の証券取引法の適用はない。しかし、外貨建てワラントが国内に持ち込まれ、ひとたび国内で取引されるようになると、証券取引法の適用を受ける。すなわち、発行者、有価証券の売出しをする者、引受人又は証券会社は、届出を要する有価証券を募集又は売出しにより取得させ、又は売り付ける場合には、目論見書を予め又は同時に交付する義務を負う(証券取引法一五条二項本文)。したがって、外貨建てワラントを国内で売り出す(販売する)ときには、証券会社は、必ず購入者に有価証券目論見書を直接交付しなければならないのである。

また、本件において、原告が被告会社から購入したトヨタ自動車ワラントは発行当初から日本国内における販売が予定されていたことが明らかであり、被告会社の売付は「募集」又は「売出し」に該当するから、被告会社は原告に対し同ワラントの有価証券目論見書を作成交付する義務があるにもかかわらず、被告会社(その従業員であるB)は原告にトヨタ自動車ワラントを売り付けるに際し、同ワラントの有価証券目論見書を交付せず、右義務に違反した。

(三) 被告会社の責任について

(1) 被告会社の従業員であるBらの前記違法行為(各義務違反行為)は、原告との証券取引契約上の義務に違反する行為であるから(債務不履行として)、被告会社は民法四一五条に基づいて原告が被った損害を賠償する責任を負う。

(2) また、被告会社は原告に対し、証券取引法一六条に基づいて、被告会社(その従業員であるBら)がトヨタ自動車ワラントの取引に際して同ワラントの目論見書を交付しなかったことにより原告が被った損害を賠償する責任を負う。

(3) さらに、Bらの前記違法行為(各義務違反行為)は証券取引法及びこれに基づく諸法令にも違反する行為であるから、これは全体として社会的相当性を逸脱し、民法七〇九条の不法行為に該当するものである。

そして、被告会社は、証券業を営むために、京都支店の従業員としてBらを雇用してワラント売買等の業務に従事させていたのであるから、被告会社は原告に対し、民法七一五条に基づいて、Bらがワラント売買という被告会社の事業を執行するについて、原告に与えた損害を賠償する責任を負う。

(四) 原告の損害の有無と損害額について

原告は、被告会社の債務不履行等(Bらの前記違法行為等)によって次のとおりの損害を被った。

(1) ワラント売買による損害 二六三万七四三四円

原告は本件ワラント購入代金として合計四四九万〇五七五円を出捐し、売却代金として一八五万三一四一円の返済を受けたから、差引二六三万七四三四円の損害を被った。

(2) 弁護士費用相当額の損害 三〇万円

原告が被った損害の賠償を被告会社に対して請求するには、本件事案の内容等からして、法律専門家である弁護士に訴訟の提起・追行を委任することが必要不可欠であったことから、原告は弁護士である原告代理人に本件訴訟の提起・追行を委任するとともに、報酬を支払う旨の合意をした。

そして、本件事案の内容、請求金額からして原告が被った弁護士費用相当額の損害は三〇万円である。

(五) 過失相殺について

一般に有価証券の取引被害における欺瞞的勧誘方法(不実告知・説明不足)は、勧誘者に対する信頼を利用して顧客の落ち度を構造的に取り込むものであるから、顧客の落ち度はつきものである。したがって、被害者である顧客の落ち度それ自体を勧誘者の違法性と切り離して独立に評価すべきではない。商品の危険性について説明がなされなかった場合にそれによって引き起こされた落ち度、例えばワラントの仕組み、危険性について十分調査しなかったなどの顧客の落ち度はいわば「仕組まれた落ち度」というべきものである。

ワラントは権利行使期間が過ぎると無価値となる証券であり、権利行使期間が残っていても株価が暴落したような場合は無価値化する証券であるため、証券会社がワラントを所持している場合は損害を回避するために非常に強い売却圧力が証券会社側に働き、無知な投資家に損害を押しつけようとする圧力が働くのである。また、本件ワラントの取引が行われた平成元年当時は、株価は上がるが取引高は減少傾向にあって株式取引による手数料収入は落ち込んでいたのであり、その落ち込みを補填するものとしてワラント債発行による発行手数料の取得とワラント売買(自己売買)による利益の獲得があったのである。

これらの事情に照らすと、本件において、仮に原告に過失(落ち度)が認められるとしても、安易に過失相殺をすべきではない。

【被告の主張】

(一) Bの勧誘行為の内容等(取引経過等)について

(1) 原告は昭和六三年八月に被告会社と取引を開始した当時には、既に大和證券株式会社他数社とも証券取引を行っており、豊富な投資経験及び知識を有していた。

また、被告従業員であるBが平成元年三月ころ原告に対し「ワラントというのが最近流行っています。」と話したところ、原告は当時からワラントという言葉を知っており「儲かるみたいだな。」というようなことを言った。

(2) Bは、平成元年四月一〇日、原告に電話で若築建設ワラントの購入を勧誘したが、その際、Bは原告に対し、ワラントとはある一定期間内において一定の価格で新株を引き受けることのできる権利であること、ワラントについては権利行使期間があり、それを過ぎると権利が消滅すること、ワラントの値動きについて株価と連動するものであるが、その連動幅が株価に比べて大きいハイリスク・ハイリターンの商品であること、外貨建てのものについては為替の影響を受けること、権利行使期間を過ぎると無価値となること等を、原告が既に取引をしていた転換社債を例に出して説明した(なお、その際、Bが原告に対し、「絶対儲かります。」「これは取れます。」「ちょっと待ってみてください。」と言ったことはない。)。

原告は、ワラントの危険性を理解した上で若築建設ワラントを代金一五五万八〇五〇円で購入した。

その後、若築建設ワラントが値上がりし、Bが同月二〇日と二六日に同ワラントの値動きを原告に報告するとともにその売却を勧めたところ、原告は、同月二六日にこれを一八五万三〇三一円で売却し、二九万四九八一円の利益を得た。

(3) Bは、平成元年五月二九日、原告に対し、トヨタ自動車ワラントの購入を勧誘したところ、原告は同ワラントを代金二九三万二五二五円で購入した。

右勧誘の際には、社団法人日本証券業協会の平成元年四月一九日付け理事会決議により外貨建てワラントについては、予め顧客に対して説明書を交付し、当該顧客から「外国新株引受権証券の取引に関する確認書」(以下「確認書」という。)を徴求するものとされていたことから、Bは原告に対し、電話で「ワラントに関して書いていただく書類がありますので、後日その書類を頂きにお伺いします」という趣旨を原告に伝え、原告もこれを了承した(なお、その際、Bが原告に対し「必ず儲かる。」などと言った事実はない。)。

(4) Bは、トヨタ自動車ワラントの入金があった平成元年六月九日の翌週である同月一二日から一六日での間に、一人で原告の経営するa工業株式会社(以下「a工業」という。)に出向き、同社の社長室において、外貨建てワラントの商品特徴及び仕組み、その危険性等についてわかりやすく説明した「外貨建てワラント取引説明書」(乙四号証。以下「取引説明書」という。)を原告に交付した上、別に用意していた、取引説明書の内容を確認し、顧客の判断と責任において外国新株引受権証券の取引を行う旨の記載のある確認書の用紙と外国証券取引口座設定約諾書の用紙を示し、これらに原告の署名捺印を求めたが、原告は取引説明書の内容を確認していないので確認書に署名捺印できないとしてこれを拒否した。

Bは、その後も三回程度、原告に対し確認書を差し入れるよう求めたが、その際にも、原告は、取引説明書を読んでいないから確認書に署名捺印することはできないと言ってこれを拒否した。

(5) 原告がトヨタ自動車ワラントを購入した後も、Bは原告に対し、その値動きを適宜報告しており、平成元年一〇月五日には同ワラントが値下がりして約二四〇万円位になっている旨を、同月九日には約二八〇万円になっている旨を報告していたし、同月一一日には約三二〇万円位まで値上がりしたことから、その値上がり状況を原告に報告するとともに「一度売却して利益を出されたらいかがでしょうか。」と提案したが、原告は「売却しないで様子を見たい。」として売却しなかった。

その後、同ワラントは値下がりしたが、同年一二月上旬ころに再び値上がりし、同月六日には約三二〇万円位になったことから、Bが右状況を原告に報告して売却を勧めたが、原告は様子を見るとのことであった。

(6) その後、原告は、平成五年四月一五日、大和證券京都支店に対し「国内新株引受権証券及び外国新株引受権証券の取引に関する確認書」を差し入れた上で、スミトモコウワラントを購入し、その後も同月一九日には同ワラントを売却し、翌二〇日にリョービワラントを購入し、同月三〇日にはカシオワラントを購入し、翌五月一四日にはリヨウデンワラントを購入した上で同日に売却し、同月一七日にはケンウッドワラントを購入するなど、多数のワラント取引を行っている。

(二) Bら被告会社従業員の違法行為(義務違反)について

(1) 説明義務違反について

原告は、Bが本件ワラントの購入を勧誘する以前から、他の証券会社数社と取引を行って、豊富な投資経験及び知識を有しており、平成元年三月当時には既にワラントという言葉は知っていた。

Bは原告に対し若築建設ワラントの購入を勧誘するに当たり、口頭でワラントの商品説明を十分行っており、その上で、原告は同ワラントの購入と売却を通じてワラント取引について認識を得ていたし、しかも、トヨタ自動車ワラントの勧誘の際には、その購入ために被告に差し入れてもらうべき書類があることを伝えた上で、外貨建てワラントの商品特徴及び仕組み、その危険性等についてわかりやすく説明した取引説明書を原告に交付しているから、被告会社(その従業員であるB)に原告の主張するような説明義務違反はない。

なお、本件の場合、原告から被告会社に対し確認書が差し入れられていないが、これは、Bが原告に取引説明書を交付したにもかかわらず、原告が右説明書を読んでいないことを理由に確認書への署名捺印をしなかったことによるものであり、Bからの説明等により、実質的には原告は取引説明書の内容を確認し、その判断と責任においてワラント取引を行う旨を表明していた(実質的に顧客の判断が確保されていた)から、原告から確認書が差し入れられていないことをもって、本件ワラントの勧誘が私法上の不法行為となるものではない。

結局のところ、原告はワラントの取引の危険性を理解して本件ワラントを購入したが、相場変動の結果損失を被ったにすぎない。

(2) 誠実・公正業務遂行義務違反、適合性の原則遵守義務違反、利益相反回避義務違反、有価証券目論見書交付義務違反について

原告の主張はいずれも争う。

(三) 被告会社の責任について

Bが被告会社京都支店の従業員であり、同人が被告会社の事業であるワラント売買等の業務に従事していたことは認め、その余の原告主張事実はいずれも否認する。

(四) 原告の損害の有無と損害額について

原告の主張はいずれも否認する。

第三主たる争点に対する判断

一  Bの勧誘行為の内容等(取引経過等)(争点1(一))について

前記争いのない事実のほか、証拠(甲一号証、五号証、二六号証、二七号証の一、二、検甲一号証、乙一号証の一ないし二五、二号証の一ないし一一、三号証の一ないし四、四号証、五号証の一ないし六、六号証の一ないし一一、七号証の一ないし一六、八号証の一ないし一四、九号証の一ないし三、一〇号証の一ないし二二、一一号証の一ないし四、一二号証の一ないし五、一三号証ないし一六号証の各一、二、一七号証の一ないし四、一八号証の一ないし一七、一九号証及び二〇号証の各一、二、二一号証、二二号証、調査嘱託の各結果、証人Bの証言、原告本人尋問の結果)及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。

1  原告(昭和二七年○月○日生まれの男性)は昭和四九年三月に大学(経営学部)を卒業して、父親が経営していた総合建設業を営むa工業に入社し、昭和五三年に同社の代表取締役となった者である。

原告は、昭和六一年八月ころから大和證券株式会社や三洋証券株式会社との間で株式や転換社債等の証券取引を行うようになり、特に三洋証券株式会社との間では、三〇〇万円で中国ファンドを購入した上で、パソコンを利用した株式取引等に関する情報サービスの提供が受けられるという内容の契約を締結して証券取引を行うようになった。

原告は、昭和六三年五月ころ被告会社京都支店の従業員であるBから被告会社との証券取引の勧誘を受け、その際、当時人気があり入手困難となっていた新規公開株や新発の転換社債を原告に優先的に割り当てるのであれば被告会社との取引を考えると言ったところ、Bが原告の要求するとおり、原告にこれらを割当てる旨の勧誘を行ったことなどから、同年九月ころから被告会社との間で新規公開株や新発の転換社債等の証券取引を繰り返し行うようになった。

なお、原告は平成元年四月一〇日に被告会社から若築建設ワラントを購入するまで、ワラント取引の経験は全くなかった。

2  Bは、かねてから原告に対し、被告会社でBの先輩に当たる従業員がワラント取引で顧客に利益を上げてもらっているなどと話していたが、平成元年四月当時、同人としてはそれまで顧客にワラントの購入を勧誘したことはなかったものの、株式市場で建設株の人気が出始めており、若築建設の株価に値ごろ観があったことから、同社の株であれば株価の上昇が見込めると判断して原告に若築建設ワラントの購入を勧誘することとし、同月一〇日、原告に対し電話で若築建設ワラントを購入するように勧めた。

しかし、原告がワラントについてはこれまでに取引をした経験がなく、その内容が判らないなどとして右勧誘に応じなかったため、Bは原告に対し、原告が既に取引経験を有していた転換社債を例に出しながら、ワラントはある一定期間内において一定の単価で新株を引き受けることのできる権利であること、ワラントの値動きは株価と連動するものであるが、その値動きの幅が株価に比較して非常に大きく、いわゆるハイリスク・ハイリターンの商品であること、外貨建てのものについては為替の影響を受けること、ワラントの価格は被告会社(B)に問い合わせれば判ること等を説明するとともに、若築建設ワラントの取引をすれば利益が上げられると思うから「ちょっとこれを持ってみてください。」などと言って、二、三十分間にわたり勧誘した(その際、Bは原告に対し、ワラントには権利行使期間があり、同期間を経過すると無価値となること、Bが勧誘する若築建設ワラントの権利行使期間がいつであるか等について説明せず、ワラントの取引が相対取引であること、若築建設の具体的なパリティ〔理論価格〕、プレミアムについても説明しなかった。)。

原告は、それまでにBが勧誘した取引によって利益を得ており、Bを信頼していたことや、若築建設ワラントの値段が一五〇万円ほどであったことなどから、Bの勧誘に応じて若築建設ワラント一〇ワラントを購入することとし、代金として一五五万八〇五〇円を支払った。

(なお、検甲一号証及び原告本人尋問の結果において、原告は若築建設ワラントの勧誘を受けた際には、Bからワラントは株と同じようなものであり、若築建設ワラントを購入すれば必ず儲かるとして執拗に勧誘を受けただけで、ワラントの商品特徴、仕組み及びその危険性等について何らの説明も受けていないとしているが、原告の従来の証券投資に対する態度等のほか、原告は当初はワラントの商品特徴、仕組み等が判らないなどとして若築建設ワラントの購入を拒否していたにもかかわらず、Bとの電話が終了する頃には、同ワラントを購入する旨決定していること等に照らし、にわかに信用することができない。また、乙二二号証〔Bの陳述書〕及び証人Bの証言中には、Bは、若築建設ワラントの勧誘の際、原告に対し、ワラントについて権利行使期間が過ぎると「紙屑になる」という表現はしていないものの、ワラントについては権利行使期間があり、それを過ぎると権利が消滅することのほか、若築建設ワラントの権利行使期間がいつであるかについても説明したとする部分があるが、原告はBからそのような説明を受けたことはないと供述していること(原告本人尋問の結果)のほか、検甲一号証〔平成五年五月六日の原告とBとの電話での会話内容を録音した録音テープ〕では、B自身が原告に対し、ワラントは権利行使期間を経過するとその価値がなくなる〔価値が零になる〕旨の説明をしていないことを認める旨の供述をしていることに照らすと、右部分はにわかに信用することができないというべきである〔乙二二号証において、Bは、検甲一号証における発言の趣旨はワラントが紙屑になるとの表現を用いて説明していないことを認めたにすぎず、同号証中の会話内容には、原告が一方的にきめつけて発言したため、顧客と従業員という立場もあって、原告の発言に対して曖昧な返事が多く、原告の発言に迎合するような部分があると供述する。確かに、右会話中のBの発言内容の一部に、原告の発言に対して曖昧な返事をしている部分や迎合的な返事をしている部分等、Bがその顧客であった原告の感情を損なわないように配慮したことが窺われる部分もあるが、右会話中においても、Bからは絶対に儲かると言われたのみで、ワラントについて何ら説明を受けたことはないし、ワラントに関する取引説明書の交付を受けたこともないとする原告に対し、Bは、原告に若築建設ワラントを勧めるに当たり、「絶対に儲かる。」と言ったことはなく、ワラントの仕組みについてはある程度の説明は行っており、原告にワラントに関する取引説明書を交付したこともあると反論していること等に照らし、乙二二号証における右の供述部分もにわかに信用することができない。〕。

3  その後、原告は、平成元年四月二六日、Bから若築建設ワラントの値動きを聞き、同人から同ワラントの売却を勧められたことから、これを代金一八五万三〇三一円で売り、若築建設ワラントの取引によって差引二九万四九八一円の利益を得た。

なお、原告と被告会社との取引は顧客に預かり証等を発行しない月次報告書方式で行われており、原告が若築建設ワラントを購入した後、原告には被告会社から、約定年月日、受渡月日、銘柄、商品名、取引内容、建通貨、市場、償還年月(ただし、実際には権利行使期間を意味する。)、建通貨による国外での受渡金額等として数量、単価、約定金額、ワラントスウ、決済通貨による国内での受渡金額等として決済通貨、為替レート、売・買受渡金額、国内での受渡金額、受渡金額差引合計等が記載された取引報告書(甲二六号証と同様式のもの)が送付された。

4  Bは、トヨタ自動車株式会社の平成元年六月度の決済では好業績が見込めると日経新聞等で報道されていたことや、それまでの同社の株価の推移等からして株価の上昇が期待できるものと考え、平成元年五月二九日、原告に対し電話で一〇分から一五分程度をかけてトヨタ自動車ワラントを購入するよう勧誘した(ただし、その際、Bは原告に対し、ワラントの商品特徴、その危険性等については説明をせず、トヨタ自動車株式会社の株式の動向等を中心に説明した。)。

そこで、原告は、Bからの勧誘に応じることとし、トヨタ自動車ワラント二〇ワラントを購入し、被告会社に代金として二九三万二五二五円を支払った。

また、Bは、社団法人日本証券業協会の平成元年四月一九日付けの理事会決議によって、同協会員が顧客と外国新株引受権証券(ワラント)の取引を行おうとするときは、予め顧客に対し説明書を交付し、当該取引の概要及び当該取引に伴う危険に関する事項について十分説明するとともに、取引に当たっては、当該顧客から「外国新株引受権証券の取引に関する確認書」を徴求するものとされていたことから、原告に対し、ワラントに関して書いてもらう書類があるので後日その書類をもらいに行く旨を併せて伝えた。

5  その後、原告は、平成元年六月一〇日ころには、被告会社から、トヨタ自動車ワラントについて、約定年月日(平成元年五月二九日)、受渡月日(六月九日)、銘柄(トヨタジドウシャWR93)、商品(WR)、取引内容(買)、建通貨(USドル)、市場(国内店頭)、償還年月(五年六月。ただし、実際には権利行使期間を意味する。)、建通貨による国外での受渡金額等として数量(一〇〇千通貨)、単価(二〇五〇)、約定金額(二〇五〇〇〇〇)、ワラントスウ(二〇WR)、決済通貨による国内での受渡金額等として決済通貨(円)、為替レート(一四三・五)、売・買受渡金額(二九三万二五二五円)、国内での受渡金額(二九三万二五二五円)、受渡金額差引合計(二九三万二五二五円)が記載された取引報告書(甲二六号証)及び右計算書とほぼ同様の内容が記載された「外国証券受渡計算書」(甲一号証)の交付を受けた。

6  Bは、トヨタ自動車ワラントの代金が入金された平成元年六月九日以降にa工業を訪ね、同社の社長室において、原告に対し、外貨建てワラントの商品特徴、仕組み、危険性等を説明した取引説明書(乙四号証と同一内容のもの)を交付し、別に用意していた、右説明書の内容を確認し、私の判断と責任において外国新株引受権証券の取引を行う旨の記載のある確認書(乙四号証の末尾にあるものと同一内容のもの)、外国証券取引口座設定約諾書の各用紙を示し、これらに署名捺印をして被告会社に差し入れてくれるよう求めた。

これに対し、原告はBに対し「こういうふうな書類は事前にもらうものじゃないかな。」などと言い、確認書の用紙には取引説明書の内容を確認した上で署名捺印するとして、その場では確認書用紙に署名押印をしなかった。

そこで、Bは、その後二回ほど電話で確認書用紙に署名押印をして被告会社に差し入れてくれるように依頼したものの、原告が取引説明書を読んでいないので署名捺印できないと回答したため、平成元年六月二〇日には、原告が母名義で行った有価証券売却代金の受渡しを口実にしてa工業を訪ねて確認書を差し入れてくれるよう求めたが、その際にも、原告は取引説明書を読んでいないので確認書には署名捺印できないと述べてこれを拒否した。

また、平成二年五月ころには、Bの担当上司であったC営業課長が原告を訪ねて確認書の差入れを求めたが、その際にも、原告はこれを拒否し、結局、被告会社に確認書を差し入れなかった。

(なお、検甲一号証での原告の発言及び原告本人尋問の結果中には、原告がBから取引説明書の交付を受けたことはなく、確認書に署名捺印を求められたこともないする部分があるが、検甲一号証及び証人Bの証言において、Bは原告に対し取引説明書等を交付した上で確認書への署名捺印を求めたことについて具体的かつ詳細な供述をしていること、原告の右供述の趣旨は要するにその間の事情等については明確な記憶がないというにすぎないこと〔平成七年六月一四日付の原告本人尋問調書一六丁表ないし一七丁裏〕に照らし、原告の右供述部分はにわかに信用することができない。)。

7  原告は、右2及び4のとおり、平成元年四月一〇日に若築建設ワラントの勧誘を受けた際には、Bからワラントの商品特徴や仕組み等について説明を受けたが、その際、Bは転換社債を例に出しながらワラントの商品特徴や仕組み等について説明したのみで、ワラントには権利行使期間があり、同期間を経過すると無価値となること(投資金額全額の損失を被ること)、Bが勧誘する若築建設ワラントの権利行使期間がいつであるか等について説明をせず、同年五月二九日にトヨタ自動車ワラントの勧誘の際にも、トヨタ自動車株式会社の株式の動向等を中心に説明したのみで、ワラントには権利行使期間があること、トヨタ自動車ワラントの権利行使期間が平成五年六月であること等について何らの説明をしなかったこと、被告会社から原告に本件ワラントの取引後に送付された取引報告書にも「償還年月」との表示があるのみで、権利行使期間の表示はなかったことなどから、ワラントも株式や転換社債と同じようなものと考えており(ただし、原告は、その本人尋問において、ワラントは株式のようなものと理解していたと供述する一方で、ワラントは転換社債のようなもので償還期限が到来すれば出捐した金員の償還が受けられるものと思っていたとする部分があり、原告が実際にワラントの性質等をどのように理解していたかは明確でない。)、権利行使期間の経過によって原告が購入したワラントが全く無価値のものとなる(投資金額全額の損失を被る)とは認識していなかった。

(なお、原告が本件ワラントの購入後にBから交付を受けた取引説明書には、「行使期間」について「ワラントの生命は権利行使期間中だけです。ワラントは株式を取得する権利ですからその権利行使期間が過ぎるとワラントの経済的価値はなくなります。しかし、言いかえると、ワラントを売却または行使しなかったことによる損は、買付時よりどんなに株価が下がろうとも、ワラントの買付代金のみに限定されます。したがってワラント売買リスクは最大限でも買付代金の範囲までということになります。」との説明が記載されていたが、原告が右説明書を読んでいないとして確認書への署名捺印を拒否していたことは右認定のとおりであって、原告が取引説明書を読んでその内容を確認していたと断定するに足りる証拠はないし、仮に原告が右説明書を読んでいたとしても、被告会社から送付された取引報告書に権利行使期間の表示がなかったため、原告がトヨタ自動車ワラントの権利行使期間がいつであるかを把握することは困難であったというべきである。)

8  Bは、原告がトヨタ自動車ワラントを購入した後も、原告に対し、その値動きを適宜報告しており、平成元年一〇月五日には、原告が被告会社に雪印乳業株一〇〇〇株の売却注文を出した際に、同ワラントが約二四〇万円に値下がりしている旨を報告し、同月一一日には、同ワラントが約三一六万円まで値上がりしたことから、右値上がりの状況を報告するとともに、同ワラントの売却を勧めたが、原告は「様子を見る」として、同ワラントを売却しなかった。

さらに、Bは、同年一二月六日ころ、それまで値下がりしていたトヨタ自動車が再び値上がりし、約三一四万円で売却できる状況となったことから、原告にその旨を伝えて同ワラントを売却するよう勧めたが、原告はこれに応じなかった。

(なお、甲二七号証の一、二〔a工業の電話連絡帳〕はその作成者及び作成経過等が明らかでなく、同書証にBから原告に電話があった旨の記載等がないことのみをもって、Bと原告との間に電話でのやりとりがなかったと判断することはできない。)

9  原告は、平成二年一二月ころ、Bに対し、原告と被告会社との間のワラント取引を含めた全取引に関する評価損益の計算を求め、Bが提出した計算書によって、トヨタ自動車ワラントの評価損が二〇〇万円程度となっていることを知り、同ワラント取引を含む被告会社との証券取引による損失はどうしてくれるのかなどとBの責任を追及したことがあったが、その際、Bは原告に対し「業績の回復と市況の回復によってまた元に戻るでしょう。」などといった(平成七年六月一四日付の原告本人調書二五丁表、平成七年一〇月四日付の証人B証人調書一七丁裏)。

その後、原告は、平成二年一二月以降の段階で、被告会社からトヨタ自動車ワラントについての権利行使期間が平成五年六月である旨記載された文書の送付を受けたこと等によって、ワラントには権利行使期間があり、同期間を経過すればワラントが無価値となる(投資金額全額の損失を被る)ことを確知した。

10  その後、原告は、平成五年四月二日に大和證券株式会社京都支店、同年七月一二日に三洋証券株式会社京都支店、平成六年三月一四日に第一證券株式会社京都支店に対しそれぞれ信用取引口座設定約諾書を差し入れ、有価証券の信用取引を行うようになった。

また、原告は、平成五年三月一五日、大和證券株式会社京都支店に対し、外国新株引受権証券の取引に関する確認書(乙五号証の四)、外国証券取引口座設定約諾書(乙五号証の五)を差し入れて同社との間でワラント取引を繰り返し行うようになった(この点について、原告は、その本人尋問において、原告が再びワラント取引を行うようになったのは、大和證券株式会社の担当者から、ワラントに関する本やパンフレットの交付を受け、ワラントの仕組み等について詳細な説明を受けたこと、右担当者が勧めるワラントは「日計り」として利益が確定しているものであるからと勧誘されたことによるものであると供述している。)。

11  原告は、平成五年五月六日、Bに電話をかけて、同人の原告に対するワラント取引勧誘の際の態度等を非難するとともに、被告会社においてトヨタ自動車ワラントの取引による原告の損失を補填するよう要求したが、被告会社は原告の要求に応じなかった。

原告は、トヨタ自動車ワラントの権利行使期間(平成五年六月)の迫った同月一七日、被告会社で右ワラントを売り、売却代金として一一〇円を得た。

二  Bら被告会社従業員の違法行為(業務違反)の有無(争点1(二))について以上の事実を前提に、Bの本件ワラントの勧誘行為等に原告の主張するような違法性が認められるかどうか等について判断する。

1  説明義務違反の有無(争点1(二)(1))について

(一) ワラントは、株式の現物取引等と比較して価格の変動率が大きく、短期間で大きな利益を得ることがある反面、値下がりにより大きな損失を被ることもあり、しかも、所定の権利行使期間内に売却するか、更に出捐して新株引受権を行使するかしないと無価値となる(ワラント取得に要した投資金額全額の損失を被る)というものであり、外貨建てワラントにあっては為替レートの変動にも影響を受けるという、いわゆるハイリスク・ハイリターンの商品であって、しかも、昭和六〇年一一月にワラントの国内での発行が解禁され、更に翌六一年一月に海外で発行されたワラントの国内での取引が解禁されたという、比較的新しい商品であり、原告が本件ワラント取引の勧誘を受けた平成元年当時には、一般の投資家にワラントの商品特徴、仕組み等が周知されているとはいい難い状況であった(甲二号証の一、二、三号証ないし五号証、一三号証、一四号証の一ないし一一、一五号証、一六号証、一七号証の一ないし五、一八号証、一九号証、二一号証の一ないし五、二二号証、三〇号証、三一号証、乙四号証及び弁論の全趣旨)。したがって、証券会社の従業員が外貨建てワラントの取引を顧客(投資家)に勧めるに当たっては、顧客に対し、ワラントの商品特徴、仕組み及び危険性等、ワラント取引の概要及び取引に伴う危険性について十分に説明して、そのことを理解させた上で取引を行うべき義務があったというべきである。

ところが、前記認定のとおり、Bは、それまでワラント取引の経験がなかった原告に対し電話で本件ワラントの購入を勧誘し、平成元年四月一〇日に若築建設ワラントの取引を勧誘した際に、原告が既に取引経験を有していた転換社債を例に出しながら、ワラントはある一定期間内において一定の単価で新株を引き受けることのできる権利であること、ワラントの値動きは株価と連動するものであるが、その値動きの幅が株価に比較して非常に大きく、いわゆるハイリスク・ハイリターンの商品であること、外貨建てのものについては為替の影響を受けること、ワラントの価格は被告会社(B)に問い合わせをすれば判ること等を説明したのみで、ワラントには権利行使期間があり、同期間を経過すると無価値となること(投資金額全額の損失を被ること)、Bが勧誘する本件ワラントの権利行使期間がいつであるか等について説明をせず、そのため、原告は右の点について十分な理解と認識のないまま、被告会社と本件ワラント取引を行ったものと認めるのが相当であるから、Bの本件ワラント取引の勧誘には、右の点について説明義務違反があったというべきである。

(二) また、原告は、Bの原告に対する本件ワラントの勧誘行為には、右の説明義務違反のほか、ワラントの価格変動の大きさ、独特の価格形成のメカニズムなど当該取引の概要及び取引に伴う危険性について説明しなかったという説明義務違反があると主張するところ、Bが原告に対し、若築建設の具体的なパリティ(理論価格)、プレミアムについては説明しなかったことは前記認定のとおりであるものの、右の説明内容のほか、前記認定にかかる原告の投資経験及び知識、投資目的、本件ワラント購入に際しての投資態度等に照らすと、右の権利行使期間の存在等に関する説明義務違反の点を除き、ワラント取引の概要及び取引に伴う危険性については一応の説明はしていたものというべきであり、Bが原告に対してなした勧誘行為に説明義務に違反する点があるとは認められないから、原告の右主張は採用することができない(なお、原告は、Bが原告にワラントの値動きは株価と連動するものであるが、その値動きの幅が株価に比較して非常に大きいと説明した点について、ワラントの価格が株価と連動するとの右説明は誤りであると主張する。しかし、Bはワラントの価格が株価の変動率よりも大きいというワラントの重要な商品特徴等については説明をしたものと認められるから、仮に右説明の一部にBの誤った認識に基づく部分があるとしても、これをもってBに説明義務違反があったと断ずることは相当でない。)。

(三) さらに、原告がBから外貨建てワラントの商品特徴、仕組み、危険性等について説明した取引説明書の交付を受けたことは前記認定のとおりである。しかし、ワラント取引の特殊性等に照らすと、右のような取引説明書はワラント取引の勧誘に際して予め顧客に交付して取引開始前に熟読することを求めるべきものであるところ、本件において、Bは原告が本件ワラントを購入した後(トヨタ自動車ワラントの購入代金が被告会社に入金決済された後)になって、右説明書を原告に交付したにとどまり、しかも、原告から右説明書を読んでいないとして、確認書への署名捺印を拒否されたにもかかわらず、この点について何らの措置も講じていないこと、後に被告会社から原告に送付された取引報告書にも権利行使期間の表示がないため、これによっても本件ワラントの権利行使期間がいつであるかを確知することは困難であったことに照らすと、原告に対し取引説明書を交付したことのみをもって、Bに説明義務違反がなかったものとはいえない。

2  誠実・公正業務遂行義務違反の有無(争点1(二)(2))について

Bが原告に本件ワラント取引を勧誘するに当たり、ワラントに権利行使期間があり、同期間が経過すると無価値となることの説明を行わなかったこと、その後、被告会社が原告に対し「償還年月」(トヨタ自動車ワラントについては平成五年六月)と表示し、権利行使期間の表示のない本件ワラント取引に関する取引報告書を送付したことは前記認定のとおりであり、被告会社従業員であるBらの右行為は、有価証券の売買等に関し重要な事項について誤解を生ぜしめる行為というべきであり、証券取引法その他の法令の定めに照らし、違法な行為というべきである(特に、国内の主要な証券会社の一つである被告会社が権利行使期間を「償還年月」と表示したワラント取引に関する取引報告書を顧客である原告に送付し、これについて何らの説明等を行わなかったことは強く非難されるべきである。)。

なお、原告は、Bは原告に本件ワラント取引の勧誘に当たり、株価変動等に関する断定的判断を提供して違法な勧誘をしたと主張するが、前記認定によれば、Bの原告に対する勧誘行為に適切とはいえない部分はあるものの、原告の投資経験及び知識、従前の投資経過等をも併せ考慮すると、Bが原告に対する勧誘に当たり、本件ワラントの価格変動等に関して断定的判断を提供したものと断定することはできない。

3  適合性の原則遵守義務違反の有無(争点1(二)(3))について

原告は、原告にはワラントのようにハイリスク商品を購入する意向はなく、かつワラント投資に関する知識も経験もなかったのであるから、Bが原告に本件ワラント取引を勧誘した行為には、適合性の原則遵守義務違反があると主張する。

しかし、原告の年齢、職業、投資目的、投資経験等が前記認定のとおりであることのほか、原告は本件ワラントの取引によって損失を被ることが明らかとなった平成五年四月以降も、他の証券会社との間で有価証券の信用取引やワラント取引を繰り返し行っていることに照らすと、Bが原告に本件ワラント取引を勧誘した行為が適合性の原則遵守義務に違反するものとはいえない。

4  利益相反回避義務違反の有無(争点1(二)(4))について

原告は、被告会社(その従業員であるB)はかねて原告の株式売買の取次業務を行っていたところ、何らの説明を行うことなく、原告との本件ワラントの売買業務を行い、原告に本件ワラントを購入させて証券取引法四六条の取引態様明示義務、利益相反回避義務に違反する行為を行い、これによって原告に損害を与えたと主張する。

本件ワラントの勧誘に際し、Bが原告に対しワラントの取引が証券会社である被告会社と顧客である原告との相対取引であることを説明しなかったことは認められるが、前記認定にかかる原告と被告会社との取引経過、原告の本件ワラント取引に対する投資態度等に照らすと、これによって原告が何らかの損害を受けたものと認められないから、被告会社(B)の右各義務違反行為によって損害を受けたとする原告の右主張は、その余の点について判断するまでもなく、理由がないというべきである。

5  有価証券目論見書交付義務違反の有無(争点1(二)(5))について

原告は、被告会社は、本件ワラント取引に当たり、証券取引法一五条二項に基づいてトヨタ自動車ワラントの有価証券目論見書を作成交付すべき義務があるにもかかわらず、被告会社(その従業員であるB)はトヨタ自動車ワラントの売付に際し、同ワラントの有価証券目論見書を原告に交付せず、これによって原告に損害を与えたと主張する。

前記認定に照らすと、被告会社(その従業員であるB)は、本件ワラント取引に当たり、同ワラントの有価証券目論見書を原告に交付していないものと認められるが、右(四)と同様、原告と被告会社との取引経過、原告の本件ワラント取引に対する投資態度等に照らすと、これによって原告が何らかの損害を受けたものとは認められないから、その余の点について判断するまでもなく、原告の右主張は理由がないというべきである。

三  被告会社の責任の有無(争点1(三))について

以上の認定判断によれば、Bら被告会社の従業員の原告に対する本件ワラント取引の勧誘行為等には法令に違反し社会的相当性を逸脱した違法があるというべきであるところ、右行為はBが被告会社の業務を執行するについて行われたものであるから、Bらの使用者である被告会社は原告に対し、Bら被告会社従業員の不法行為等(なお、被告会社〔従業員〕が原告と本件ワラントの売買契約を締結した後、原告に対し権利行使期間を「償還年月」と誤って表示した本件ワラント取引に関する取引報告書を送付したことは、原告との右契約〔及び証券取引契約〕に基づいて被告会社が負担する債務の不履行〔不完全履行〕というべきである。)によって原告に生じた損害を賠償すべき義務(民法四一五条、七一五条に基づく義務)があるというべきである。

なお、原告は、被告会社には、トヨタ自動車ワラントの取引に際して同ワラントの有価証券目論見書を交付しなかったことにより原告が被った損害を賠償する責任があると主張するが、原告が被告会社からトヨタ自動車ワラントの有価証券目論見書の交付を受けなかったことによって損害を被ったものと認められないことは前叙のとおりであり、原告の右主張は採用することができない。

四  原告の損害の有無と損害額(争点一(四))について

1  本件ワラント売買による損害

原告は、Bら被告会社従業員の前記不法行為等(義務違反行為)によって本件ワラント購入代金として合計四四九万〇五七五円を出捐し、その後、同ワラントの売却代金として合計一八五万三一四一円の返済を受けたから、差引合計二六三万七四三四円の損害を被ったというべきである。

2  弁護士費用相当額の損害

原告が被告会社に対し本件ワラント取引に基づく損害賠償を求めるために本訴の提起・追行を弁護士である原告代理人に委任し、これに対する報酬を支払う旨約したことは当裁判所に顕著な事実であり、被告会社には原告に対し、後記のとおり、本件事案の内容、認容額等に照らして相当と認められる弁護士費用相当額の損害を賠償すべき義務がある。

五  過失相殺の可否(争点1(五))について

前記認定事実によれば、原告はBから本件ワラント取引の勧誘を受けた際、ワラントに権利行使期間があり、同期間を経過すると無価値となる(投資金額全額の損失を被る)との説明は受けなかったものの、ワラントはある一定期間内において一定の単価で新株を引き受けることのできる権利であること、ワラントの値動きの幅は株価に比較して非常に大きく、いわゆるハイリスク・ハイリターンの商品であること等については説明を受けており、しかも、本件ワラントの購入(トヨタ自動車ワラントの購入)後とはいえ、ほどなくしてBからワラントの商品特徴や仕組みのほか、権利行使期間についての説明等が記載された取引説明書の交付を受けるとともに、Bらから再三にわたり、右説明書の内容を確認した上で確認書に署名捺印してこれを被告会社に差し入れるよう求められていたのであり、右説明書を一読し、Bに更に説明を求めさえすれば、ワラントには権利行使期間があり、同期間を経過すると無価値となる(投資金額全額の損失を被る)こと等を容易に知ることができ、トヨタ自動車ワラントが値上がりし、Bが同ワラントの売却を勧めた時期にこれを売却することによって損害を回復することができたものと認められる。また、原告が被告会社から送付を受けた本件ワラント購入に関する取引報告書には、ワラントが株式のようなものであるとする原告の理解(原告本人尋問の結果)では合理的に説明のできない「償還年月」との表示があるにもかかわらず、これについて被告会社(あるいはB)に説明を求めたことはなかったとの事実も認められるところである。これらの事実に照らすと、本件ワラントの取引によって原告に損害が発生したことについては、原告にも過失があったというべきであり、しかも、原告の職業、年齢、投資経験及び知識等を考慮すると、原告が右の点について注意を払うことは極めて容易であったと認められるから、その過失は重大というべきである。

これらの事情のほか、前記認定にかかる被告会社側(その従業員であるBら)の違法行為(義務違反行為)の内容・程度を総合考慮すると、過失相殺の法理により、被告会社が原告に賠償すべき損害額(ただし、弁護士費用相当額を除く。)は五二万七四八六円(原告に発生した前記損害額の二〇パーセント)と認めるのが相当であり(したがって、その余の損害は原告が自己責任において負担すべきものである。)、被告会社が原告に賠償すべき弁護士費用相当額の損害は、本件事案の内容、認容額等に照らし、六万円と認めるのが相当である。

また、原告は、仮に原告に過失(落ち度)があったとしても本件においては過失相殺をすべきではないと主張するが、不法行為による損害の発生・拡大に被害者側の過失が寄与したものと認められる以上、損害の公平な配分という観点から過失相殺を行うべきは当然というべきであるから、原告の右主張は採用することができない。

第四結論

以上のとおりであるから、原告の本訴請求は、不法行為等(民法四一五条、七〇九条、七一五条)に基づく損害賠償として五八万七四八六円及びこれに対する不法行為後であり、訴状送達の日の翌日である平成五年八月五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとする。

(裁判官 村田渉)

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